HITOYOSHIお手入れ簡単なシャツ
HITOYOSHIで展開している「お手入れ簡単なシャツ」は大きく分けて2種類になります。
ノンアイロンシャツ イージーケアシャツ
この2種類の違いをHITOYOSHIの通常のドレスシャツと共に簡単に表にまとめました。
・加工方法
HITOYOSHIのお手入れ簡単なシャツは大きく分けてプレキュアとポストキュアの2種類の方法で防シワ性を高めています。
ポストキュア(NON-IRONシャツ)
シャツを縫製した後に特殊な機械に通して薬品を吹きかけ、熱処理を加えることにより、架橋結合を促して、縫製直後の仕上げた状態をキープさせることにより、防シワ性を向上させる加工です。
プレキュア(イージーケアシャツ)
HITOYOSHIのイージーケアシャツは生地の段階で液体加工により織られた隣り合う糸どうしの架橋結合を促して、防シワ性を向上させる加工です。
2つの加工方法の大きな違いは、
ノンアイロンシャツは縫製後に、イージーアイロンシャツは縫製の前の生地の段階で防シワの加工をかけています。
・W/W性
W&W性(ウォッシュ&ウエア性)とは、洗濯後のしわの残り具合を表す指標で、W&W性5.0級をアイロン掛け後のシワのない状態とし、シワカット率100%。形態安定加工と言われるものは、3.2級以上でシワカット率50%以上とされています。天然素材を使用してW/W性-5級はまず存在しないとして、級数が高いほどシワになりにくい指標になります。上記の表にあるように
NON-IRONシャツ→3.2~3.5級
イージーケアシャツ→2.8~3.0級
加工の方法の違いでW/W性は異なってきます。
この数値でいうとNON-IRONシャツのほうがイージーアイロンよりシワになりにくいと言えます。
・原産国
NON-IRONシャツ→中国製
NON-IRONシャツは古くからお付き合いのある協力工場に委託しています。
HITOYOSHIの理念やモノづくり精神を理解してくれるグローバルなパートナーとの協業で
何度も試作を作り、修正し、現地の工場でミーティングを重ね作り上げました。
HITOYOSHIがこれまでに培った、エレガントで細やかな手作業や日本人男性の体系に合う立体的なパターンを取り入れながら特殊な加工と縫製により、お手入れの簡単さを実現しました。
NON-IRONシャツは製品加工で特殊な加工で溶剤を使用する為、廃液を中和する巨大な排水処理施設が必要となる為、HITOYOSHI熊本工場での加工はできない為、中国のグローバル企業に委託しています。
イージーケアシャツ→日本製(HITOYOSHI工場)
生地の状態で風合いや見栄えを活かしたままシワになりにくい加工を施した素材で
通常のドレスシャツと同じように細やかな縫製でHITOYOSHIの熊本本社工場で縫製しています。
NON-IRONシャツより防シワ性は少し弱くなりますが、アイロンがけが簡単で、風合いもよく、ケアしやすい本格仕立てのシャツになります。
・素材の混用率
NON-IRONシャツとイージーケアシャツともに綿100%の素材を使用しています。
もともとポリエステル素材のほうが加工しなくてもシワになりにくい性質があり、形態安定性の高いシャツはポリエステル高率混のものが一般的になると思います。防シワ性はありますが綿100%の生地の風合いと比べると大きな差があると思います。天然繊維である綿は肌触りや風合いが非常に良い反面、シワになりやすい素材でもあります。後述しますが、シャツとシワの改良の歴史は長く、ここ近年、加工方法の進歩により、綿100%のなかでも高級仕様とされる細番手(糸の太さが細い綿)で防シワ加工が可能になりました。今でもこれがベストといった技術が確立されているわけではありませんが、今のベストの方法で天然素材の良さを十分に引き出すようにHITOYOSHIでは綿100%にこだわっています。
・生地番手
防シワ加工の薬剤はとても強く、耐久性のある糸でしか防シワ加工はできないのがこれまでの考え方でした。
柔らかく・軽い繊細な細番手は高級シャツに使用されることが多いですが、
細い糸のほうがシワになりやすくケアが難しいのが実情です。仕立て映えする生地とシワになりにくい生地は相反する関係になります。試行錯誤を重ね、細番手である程度の風合いを残しつつ、防シワ性を高める技術が進み細番手での加工が可能になりました。NON-IRONシャツとイージーケアシャツともに綿100%の細番手の80/2以上の生地を使用しています。生地の風合い、柔らかい着心地が特徴です。
・テープ縫製(NON-IRON)
シームパッカリングとは、縫製時にできる縫い縮みのことです。縫った時にミシン目にできる縫い縮みやひきつれによる歪みによって発生します。防シワの加工によって生地の表面に膜を張ったような状態になるため、生地が若干固くなります。防シワ性があがる一方、縫い目のピリ付きは出やすくなります。
そこでNON-IRONのシャツは縫い目のパッカリング防止の為に、洗濯ジワが発生しやすい箇所(8か所)に特殊縫製を施しています。特殊縫製技術の為、通常と異なる縫製設備が必要になります。
・イージーケアシャツ
イージーアイロンシャツは縫い目にテープは入っていませんが、HITOYOSHI本社工場で培ったドレス仕立てを細やかに縫製しています。通常のドレスシャツと同等の縫製方法になります。
・ボタン
NON-IRONシャツは縫製後の製品で加工を行う為、薬剤耐久性のあるプラスティック製のボタンを使用するのが一般的になると思います。天然の貝ボタンを使用する場合、加工が終わった後の仕上げ前に釦付けをすることになります。手間暇をかけて高級シャツの代名詞、貝ボタン(高瀬貝)を使用しています。
イージーケアシャツのボタンは天然の貝ボタンのなかでも最上級とされる白蝶貝を使用しております。
・芯地
NON-IRONシャツとイージーケアシャツともに
芯地はシワになりにくく、型くずれしにくいトップヒューズ芯(永久接着芯)を使用しています。トップヒューズ芯を使用する理由は衿の表地と完全に接着させている為、保形性が上がることとアイロン掛けが用意になります。硬くなるのがデメリットですが、芯地にもこだわり張りがあり柔らかい芯地を使用しています。
・重さ
NON-IRONシャツとイージーケアシャツともに
防シワ加工を施す為、通常のドレスシャツと比較すると若干の重さが加わる傾向があります。
・柔らかさ
前述したように加工が入る為、通常のドレスシャツに比べると若干の風合いの違いを感じられるかもしれません。
NON-IRONシャツとイージーケアシャツともに
加工方法はことなりますが、現状の技術で考えられるベストの方法、生地の風合いを可能な限り損なわない方法を選択しています。
・白度
NON-IRONシャツは防シワ加工の最後でベーキング工程があります。溶剤を定着させる為に、必ず必要になる工程ですが、白色の場合、オフホワイトのように少しだけ黄みがかる傾向にあります。
イージーアイロンシャツはベーキングの工程はありませんので、その分NON-IRONシャツよりはサラシ白の表現が可能になりますが、やはり生地の表面に加工されている以上、加工無しのサラシ生地よりは白の表現が難しいと言えます。
2つの加工の違いで白度に差が出ますが、HITOYOSHIでは可能なかぎり白度管理にこだわりをもって企画しています。
まとめ
HITOYOSHIのNON-IRONシャツ
生地本来の風合いや通気性を損なわないように、防シワ性を追求したシャツ。洗濯をした後、ハンガーに一晩掛けておけば、次の日に着ていけます。折りたたんで持ち運んでも、ハンガーに吊るしておけばシワが伸びます。着用時の体温でも生地の張りが復元するので、出張などにも最適です。HITOYOSHIがこれまでに培った、エレガントで細やかな手作業や日本人男性の体系に合う立体的なパターンを取り入れながら特殊な加工を施して中国の協力工場で縫製、お手入れの簡単さを実現しました。
HITOYOSHIのイージーアイロンシャツ
アイロン要らずとは言えませんが、通常のドレスシャツに比べて断然アイロン掛けは用意になります。
生地の風合いと色合いを損なわず国産にこだわった仕立ての良い縫製で、着心地とケアのしやすさの両方を兼ね揃えたドレスシャツになります。
ケアの方法
洗濯の方法でシャツのシワの出方は大きく変わります。
ケアの方法をご確認いただき、ながくシャツをご愛用いただけたら幸いです。
【シャツのお手入れ方法】
洗い方・干し方
・洗濯用ネットを使用
シャツの前立てボタンをとめ、裏返しにしてネットに入れて洗濯すると生地、ボタンの傷みが軽減されます。
・脱水は短く
洗濯後の脱水を長く行うとシワが残りやすいので軽く脱水してください。(目安1分以内)
・シワを伸ばし、ハンガーで陰干し
洗濯後、軽くたたいてシワを伸ばし、襟、袖口、前身頃を手で伸ばして形を整え、ハンガーに掛けて陰干ししてください。全体の重みでシワが伸ばされます。
アイロンの掛け方・注意点
家庭洗濯後、シワが気になる箇所に軽くアイロン掛けしていただくと更にキレイに着ていただけます。
家庭洗濯で襟、カフス、前立てをきっちりあげるために、トップヒューズ芯(永久接着芯)を使用しております。
高温(170°以上)で芯地部分にアイロンを掛けると縮みや変形が発生する場合がありますのでご注意ください。
クリーニング店に出す場合
生乾きの状態で高温、高湿プレスを掛けると縮み、変形が発生する場合がありますのでご注意ください。
ソフトな風合いを保つためにのり付けをお避け下さい。
形態安定加工の歴史
NON-IRON SHIRTS
今回、HITOYOSHI NON-IRON シャツを販売するにあたり
日本における形態安定加工の進化の歴史を少しだけ振り返ってみます。
今日衣料用織物を対象にした樹脂加工のはじまりは1926年イギリスのTootal Broadhurst Lee.Co.,Ltd.の防しわ加工方法に関する特許だと考えられており日本でも同様の研究が進められていたがイギリスから遅れること12年後の1938年に漸く防縮加工の特許が認められ日本における形態安定加工の歴史がはじまることになります。
その後架橋反応による耐久性のある防縮加工が考えられBrooks BrothersのOXFORD生地を生産していた会社として有名なアメリカのDan River社から1951年にX-2という防しわ加工が発表され続いてAvcosetなどが発売されWash&Wear加工の基礎となりました。
さらにその後1956年にウェット法によるW&W加工法が確立されたが加工布としての性能は良好であったものの縫製後のパッカリングはじめ洗濯後の芯地とのバランスも悪く消費者の要望を満足させることが出来ず、改良が急がれその結果パーマネントプレス加工へと進化していきました。
Wash&Wear加工の欠点を改良し一歩前進したのがパーマネントプレス加工といわれ
当時としては画期的な加工法であり今日の形態安定加工の礎と言えるもので、1959年アメリカのKoratron社の特許が有名です。当時はまだ綿ポリエステル混紡が主体でした。
その後多くの加工法が発表されましたが、現在多く行われている加工はポストキュア法とプレキュア法になります。特にプレキュア法は、シャツ地のような薄い生地の加工に適していたがこの当時から加工効果がポストキュア法より劣ることが欠点とされていました。
それから永らくパーマネントプレスの時代は続きましたがノーアイロンは市場から姿を消してしまいました。加工の必要の少ない、学生服でも使用されるユニフォームユースのポリエステル高率混にとって代わられました。
1980年代後半ごろより再び天然志向の傾向が強まり日清紡が1990年に本格的な液体アンモニア加工機を国内で初めて導入しプレキュア法の樹脂加工と組み合わせたスーパーソフト加工の名称でイージーアイロン商品の販売を開始。その後このスーパーソフト加工を発展させポストキュア法と組み合わせることでその機能を大幅に向上させた純綿SSPを1993年に発売。
また同じ年に東洋紡も形状記憶シャツ「ミラクルケア」を発売し再び形態安定加工シャツが注目されることになります。その後、2003年に日清紡・香港TALアパレル・伊藤忠商事の3社の企業コラボによりさらに画期的な綿100%ノーアイロンシャツ「NON CARE」が発売されいわゆるテープ縫製シャツが世の中に登場することになります。
年月が経ち、綿100%の防シワ加工の方法は今でもこれがベストといった技術が確立されているわけではありませんが、
確実に加工方法は選択肢が増えてきており、各社、各々の思いで加工方法を選択している状況だと思います。
流れをかいつまんでとても簡略すると、
「シャツのシワが気になる、どうにかしたい」
↓
防シワの様々な加工方法を模索
↓
シワのでにくいポリエステル高率混の素材が台頭
↓
天然繊維の良さが見直され、【綿100%の防シワ加工方法を模索→綿100%の生地に防シワ加工、縫製時にできる縫い縮み(パッカリング)を特殊なテープで軽減させる】
この方法が現状のベストな方法だとHITOYOSHIでは考えております。